「志」を育むキャンパスづくり

ピックアップ

同志社大学 良心館

設計コンセプト

今出川キャンパスの同志社中学校移転後の用地に、文科系学部の受け皿となる新校舎「良心館」が2013年4月に開校されました。「良心館」には地下1階に福利厚生施設を集積させ、2階から3階にわたって学生の自立的自発的学習活動を支援する設備として、日本最大級のラーニング・コモンズ(2,550㎡)を設けています。また地階から4階まで大中小講義室が配置されています。既存施設とあわせ、ゼミナールを機軸に据えた専門教育を行う文系学部の教育拠点としてふさわしい環境が整いました。外壁には本レンガ中空積みを採用、同志社の特徴でもある組石造の風情を再現。同志社の重要文化財建物との調和を図るデザインを継承、景観保全に配慮しています。また烏丸通りに面して地域に開放され、学生の憩いの場となる今出川プラザや、キャンパス中央部にチャペルコート等の緑豊かなアメニティ空間を積極的につくり出しています。生まれ変わる烏丸沿いの景観が、地域と共生していく、開かれた同志社大学の姿を映し出すものと期待しています。本プロジェクトでは、キャンパス全体の景観整備も実施。重要文化財建物を中心に、同志社創世期の原風景を再生する等、歴史を有した魅力的なキャンパス空間の創出を目指しました。

受賞

【2013】 英国BDAブリック賞 ベスト インターナショナルプロジェクト
【2014】 平成25年 照明普及賞
【2015】 日本建築学会作品選集 入選

建物概要

発注者 学校法人 同志社
所在地 京都市上京区
用 途 大学
構造・階数 鉄骨鉄筋コンクリート造 / 鉄骨造・5F/B2F
延床面積 40,446 ㎡
竣工年 2013年
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「志」を受け継ぎ、育む、新しい学び舎

同志社大学lま1875年、新島襄が創立した「同志社英学校」を起源としています。計画地である今出川キャンパスは同志社創立の翌年から今に続き、敷地内には煉瓦造りの洋式建築が建ち並びます。 伝統と歴史を感じさせる空間として、市民にも愛されています。良心館の建築プロジェク卜は、今出川キャンパスを拡充し、 同キャンパスと京田辺キャンパス(京都府京田辺市)に分かれていた文系学部を統合移転させるキャンパス整備事業の一環であり、隣接していた同志社中学校の移転跡地を利用して延床面積40.000㎡の新しい学び舎が誕生しました。良心館は、今出川キャンパスに通う学生の学びのための複合施設であると共に、同大学の新しい顔となる建物です。歴史あるキャンパスのディテールにこだわり、外装に本煉瓦中空積みを採用しました。既存の校舎群との調和を図りながらも、列柱の奥に垣間見えるガラスファサードや最上部のテラコッタルーバーなど現代的な要素も取り入れ、今出川キャンパスの新たな景観を形成しています。教育施設として「学生の自立的自発的学習活動を支援する教育活動の整備」をコンセプ卜に、「新しい教育環境の拡充」、「全学共用オープンスペースの確保」などを目指して細部にわたり検討が加えられました。
特別教室
建物構成は、大きく3つにゾーニングされています。北側から大中小の講義室が並ぶ「教室エリア」、多様な学びに対応できる自主学習の場ラ一二ング・コモンズやゼミ室のある「中央エリア」、そして南側に「学部ヱリア」を配置しました。その他、各エリアを南北に貫く3層吹き抜けの大空間「ル一セントプラザ」、巨大な庇に覆われた地下広場「サンクンモール」により、建物としての一体感、キャンパスとの連続感を創出しました。本プロジェクトでは良心館新築のほか、既存建物の耐震改修、重要文化財施設の復元改修、外構の整備などが引き続き進められており、伝統と格式を継承した魅力あふれるキャンパスづくりを目指しています。新しい学び舎である良心館が歴史ある施設群と調和を織り成し、新時代へ向けた「志」を育む場となることを願っています。
情報教室
ラウンジ

歴史と伝統を継承し、地域と繋がる

京都御苑・相国寺から続く緑豊かな地域景観に調和した今出川キャンパスは、重要文化財の建築が並ぶ京都でも有数の歴史的景観資産を持ち、この特徴を生かした魅力的なキャンパス空間の再生整備を目指しました。構内景観整備として、西門からクラーク記念館に向かって東西に伸びる今出川キャンパスのメインストリー卜は従来自転車置場として兼用していましたが、緑豊かな歩行者専用の構内園路として改修し「パーパスロード」と名付けられました。パーパスロードに面した中学校舎跡地は、同志社大学設立時からある「彰栄館」「礼拝堂」「ハリス理化学館」に画することから、同志社創世期の原風景を残す憩いの空間、学生たちが集い語らう芝生広場「サンクタスコート」として再整備を行いました。また、今回の整備ではキャンパス内にある既存棟の耐震改修のほか、重要文化財建物である礼拝堂と八リス理化学館の改修も行いました。礼拝堂は内部の碕子・照明器具を創建当時の意匠に改修し、スロープの設置などバリアフリー対応も行い、改修後は式典、講演会、卒業生の結婚式などに利用されています。重要文化財に指定されているハリス理化学館は外装には手を加えず、館内全体を展示施設として改修し、同志社の歴史を伝える展示室や企画展示室を設け「ハリス理化学館同志社ギャラリー」として生まれ変わりました。
サンクタスコート

人が「集い・学ぶ」

良心館の建築計画は、学部一貫教育実現のため文系学部1、2年生の学修校地が今出川キャンパスに統合されることを受け、約20.000人の学生たちの学び舎として「時代を担う人を育てる」ことをコンセプ卜に、快適に学ぶことができる環境の構築を目指しました。講義室エリアでは、教養課程などの多様なカリキュラムに柔軟に対応する講義室バリエーションの設定と、学生と教員の距離感が近く密度の濃い専門教育(少人数教育)をサポー卜するゼミ演習室・小教室の充実など、教育環境の拡充を図りました。また学生が自由に学ぶためのオープンスペースとして、ラウンジ空間の他、国内最大規模のラ一二ング・コモンズ(約2.550㎡)を設けています。
ラーニング・コモンズ
ラーニング・コモンズ
学生同士が相互に学習プロセスが見える「学びの交流と啓発の空間」や、学習・研究の人的サポートなど生きた支援を行う「アカデミックスキル育成の空間」として、学生や教職員の知的交流活動の活性化が期待されています。その他、屋根のある広場空間として福利厚生エリアに面しサンクンモールを配置し、学生がニーズに応じて居心地のよい空間を選択できる計画としています。また動線計画においては、地下鉄今出川駅から良心館へ直接アクセスする動線を整備し通学学生数の増加に備えました。ルーセントプラザを中心に構成されたそれぞれの工リアが、視覚的・機能的に一定の独立性を保ちながら相互に繋がり合い、学生の生き生きとした活動的な姿が施設内外に見え隠れする新しい学び舎を形づくっています。
ラーニング・コモンズ
ラーニング・コモンズ
サンクンモール
ルーセントプラザ
パーパスロード