共用スペース「ノード」が生きる学び舎

武庫川女子大学 総合薬学教育研究棟

設計コンセプト

既設薬学部キャンパスに隣接する敷地に新校舎を増築する計画です。キャンパス全体として整合性のとれた計画を目指し、既設校舎と外装材、建物高さおよび壁面線を揃えるなど統一感のあるデザインとしています。既設校舎とは2階レベルの渡り廊下で接続し、その結節部をはじめ各階に設けられた「ノード」と呼ばれる共用スペースは教職員や学生の交流を誘発する仕掛けとなることを意図しています。主たる開口部を南北面に設置して西日対策を図るなど快適で安定した室内環境を確保し、環境や省エネルギーにも配慮した計画としています。また、各階に屋上庭園を設け、西側には芝生のオープンスペースを設けるなど、敷地全体の積極的な緑化を行っています。

受賞

【2008】 第21回日経ニューオフィス賞(近畿ニューオフィス特別賞 コミュニケーション賞)

建物概要

発注者 学校法人武庫川学院
所在地 兵庫県西宮市甲子園
用 途 大学(講義・研究施設)
構造・階数 鉄骨鉄筋コンクリート造 / 鉄骨造・5F
延床面積 11,592 ㎡
竣工年 2008年
備 考 撮影:時空アート
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既存キャンパスとの調和

武庫川女子大学薬学部は1962年に創設され、現在のキャンパスは1987年に拡張・移転されたものです。本計画は、2006年から施行された改正教育基本法による薬剤師養成教育6年制への移行や新学科設立など、ますます高度化する薬学教育に対応するため、既存キャンパスに隣接する敷地に新校舎を増築する計画です。
既存校舎は深みのあるえんじ色のレンガタイルと彫りの深い開口部による陰影のある外観が特徴的です。新校舎も既存キャンパスと調和するデザインを目指し、これまで受け継がれてきた落着きと品格のあるイメージを継承するよう心掛けました。また、既存校舎と建物高さや壁面線を揃えるなど統一感のあるデザインとすることで、キャンパス全体としてまとまりのあるシルエットを創り出しています。一方で、透明感のあるアルミカーテンウォールや自然なテクスチャーのテラコッタルーバーといった新しい要素を取り入れて、女子大らしい「明るく」「やさしい」イメージを付加し、キャンパスとして の新しい「顔」を創りあげることを意図しました。
外観

教育・研究への対応

「教育」と「研究」という2つの機能を両立させるため、建物下階(1~3階)を教育ゾーン、上階(3~5階)を研究ゾーンとした明快なゾーニングを行っています。実験動物センターなどの特殊施設は1階に設け、他のゾーンと隣接することなく成立するよう計画しています。新校舎は南・北の2棟から成り、両棟をつなぐように各階の中心に「ノード」と名づけた空間を設けています。廊下や階段など水平・垂直の人の動きが交わる場所に適度な広がりを与え、明るく快適な設えとすることで、「ひと」や「自然」や「思考」や「情報」などの、様々な「出会い」が生まれることを期待しています。既存渡り廊下と同じ2階レベルに新校舎と既存校舎をつなぐ渡り廊下を設け、キャンパス全体を2階レベルで平面的につなげています。既存図書館や談話室(ともに2階)へもアクセスしやすく、学生のアクティビティに配慮した計画としています。
ノードと一体的に計画された屋上庭園
明るく開放的なノードから六甲の山並みを望む

環境への配慮

新校舎では地域環境・地球環境への配慮・貢献を積極的に行っています。本計画では屋上緑化や壁面緑化、さらに緑化駐車場・駐輪場などキャンパス全体が緑に包まれるよう積極的な緑化を行い、地域環境の向上やヒートアイランド現象の緩和を図っています。また自然エネルギーの活用として、階段室のドラフト効果を利用した自然通風システムを採用しています。これは各開口部から取り入れられた外気を「風のみち」を経由して屋上に設置した自然排気装置から排出するものであり、中間季の温熱環境向上を図っています。
環境配慮計画 概念図
壁面緑化

利用者との協働

利用者に長く親しまれる建物としたいとの考えから、利用者の意見もできる限り計画に反映するよう心掛けました。2・3階女子便所に関しては学生とのワークショップの開催およぴアンケートの実施を行いました。また、1階エントランスホールに設置された薬学の歴史をモチーフとしたアートワークにおいては、その内容に関して先生や関係者との検討を繰り返し行いました。
薬学の歴史をモチーフとしたアートワーク
エントランスホール