人と街と建築との融合
みなとみらい大通りとすずかけ通りのクロスポイントに位置するアプローチ部分には、円形状の広場を設けています。シマトネリコの木立とこれを囲む円弧状のベンチやパブリックアートを設え、オフィスビルの導入部として、また街を訪れる人々の憩いの場として、豊かな緑と品格を持ち合わせた屋外空間を創り出しました。建物周囲は全てグランモール公園方面へとアクセスできる公共空間として開放し、大通りからの喧騒を避けた隣地側には、四季折々の樹木やアートファニチャー、木製デッキを用いたコモンスペースを要所要所に計画しました。
白を基調に帆が折り重なる外皮
外観の構成は、風を受ける帆が折り重なった光景をモチーフとしました。「港のイメージ」と、空に伸びるマリオンの縦ラインを次代へと繋げていく「未来イメージ」として表現し、みなとみらいに相応しいファサードデザインとしています。細やかな線が織りなすディティールと爽やかな白を基調とした色彩で港町としての軽やかな佇まいを表現しました。
内部と外部を連続させたエントランス
約8mの天井高をもつ1階エントランスは、二層吹き抜けのピロティと連続したガラス面により、開放的な空間で人々を迎え入れます。無機質で硬質な空間と建物周囲に植栽した季節感溢れる樹木とがコントラストを生み出しています。凛とした緊張感の中に窓越しの自然を感じる空間としました。
基準階オフィススペースは、1.8m×1.8mを基準モジュールとした奥行き約19m・天井高2.8mの無柱空間のコの字型オフィスとしています。南側の陽が射し込むスペースには、オフィス内のコミュニケーションを誘発するオープンタイプのリフレッシュコーナーを設置し、みなとみらいを見渡せる寛ぎの場としてアメニティの向上に努めています。
構造計画
上部架構
本建物の基準階は片コアを有する整形な形状で、外周部の柱は7.2m間隔を基本に配置しています。事務室部分は最大21.6mスパンとすることで、1フロア約2,195㎡の無柱空間を実現しています。地上階の構造種別は、柱、梁をS造、地下階はSRC造としたラーメン構造としています。
耐震計画
地上階の建物コア部には、制振機構として4か所の高力ボルト摩擦接合ダンパー(ブレーキダンパー)を配置し、地震応答の低減化を図っています。ブレーキダンパーの特徴はブレースと主架構の継手部にステンレス板とブレーキ材を一対にして挟み込み、その間に生じる滑り摩擦力で建物の振動エネルギーを吸収する制振システムであるため、これを採用することにより大地震時の地震応答層間変位を1/115に抑えることができ、優れた耐震性を実現しています。
基礎構造
建設地周辺の地質は、水深4 ~5m程度の海底を埋立てた埋土層であり、その下位に沖積層、上総層群が分布していました。建築計画の初期の段階から地盤特性を考慮に入れた平面計画・断面計画としたことで、建物外周部は場所打ち杭による杭基礎、建物中心部は直接基礎とし、効率的で安定した基礎構造とすることが可能となりました。
設備計画
基準階の窓廻りは、空気の壁となるエアバリアによる空調とし、天井チャンバー内の空気を柱内ダクトを通じてペリカウンターより吹き出し、その空気をブラインドボックス側の天井内ファンで吸引し外部へ排出しています。また、冬期はダンパーと排気ファンの運転を切り替えて、逆に室内側の空気を下方へ流し、コールドドラフトの室内への侵入を抑え、快適な温熱環境を実現しました。 太陽追尾センサー付電動ブラインドと高性能 Low-Eガラスを採用して、みなとみらいの美しい眺望を確保しながら、窓廻りのアメニィと省エネルギー性の向上を図りました。
本プロジェクトでは、施工段階において夏期・冬期の環境を人工的に再現した実験室内に実物大の窓廻りモックアップを設置し、ブラインドの揺れ、騒音、振動、吹出口のスリット幅や角度などの測定と調整を行い、実際の風量や風速の技術的検証を行いました。 その他、分割貸しに対応した各貸室にはあらかじめ連絡用情報シャフトを設置し、上下階に同一のテナントが入居した場合にも専用の情報系通信ネットワークが構築可能な計画としています。