誰もが使いやすい賑わいある施設づくり

ピックアップ

刈谷駅南地区第一種市街地再開発事業 刈谷市総合文化センター

設計コンセプト

本地区は、自動車関連企業が集積する刈谷市の駅前5.7haの区域の都市再生機構による再開発プロジェクトです。施設建築物としては大小のホールと生涯学習施設からなる公益施設棟と公益駐車場棟、および民間事業者が整備する商業施設棟と住宅棟から構成されます。「刈谷の顔」としての賑わいのある街づくりを目指して、アイポイントとなる形態を各施設に持たせ、刈谷の玄関口を印象付けています。また、公益施設棟は施設活動の内容を外部空間へ表出させ、人々の交流と賑わいを創出することを目指しています。

受賞

【2009】 平成21年度 愛知県人にやさしい街づくり特別賞
【2010】 平成22年度バリアフリー・ユニバーサルデザイン推進功労者表彰 内閣府特命担当大臣表彰奨励賞

建物概要

発注者 独立行政法人都市再生機構中部支社
所在地 愛知県刈谷市
用 途 ホール / 生涯学習施設 / 駐車場/ 市街地再開発
構造・階数 鉄骨鉄筋コンクリート造 / 鉄骨造・5F / B1F
延床面積 22,785 ㎡
竣工年 2009年
備 考 設備設計:総合設備コンサルタント
撮影:(株)エスエス名古屋
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テクスチャー

駅前側は自動車産業をイメージした金属とガラスで現代的・都市的なデザインを表現し、情報発信の仕掛けとしてガラスカーテンウォールを通した内外の連続性で「見る・見られる関係」をつくり、施設内の活動を外部から も垣間見ることができるものとしています。東西面は、南に広がる住居系地域への配慮や、建物間の空間を豊かにするため、土の肌合いを感じるテクスチャーを持ったタイルを用いて温かみのあるデザインとし、階段状のセットバックで大規模建築物の持つ圧迫感を低減するなどヒューマンスケールを意識した設計としています。その他、地場産業である三州瓦をイメージさせるいぶし調のタイルや、タイル工場の跡地という土地の記憶を継承するため素焼きレンガの色をポイントカラーとして採用しています。
公益施設 外観
駐車場棟 外観

建物の中核施設となるホール

建物全体の中核施設となる1,541席の大ホールは、質の高い鑑賞空間を提供するプロセニアム形式の多目的ホールである。来場者のスムーズな動線確保のため、ペデストリアンデッキを設けた2階レベルをホールのエントランスロビーとしました。舞台の大きさは約18m角を確保し、上手側舞台も主舞台に近い広さを有する3面舞台としています。客席は前後間隔960mm幅550mmとゆとりを持たせ、多様な催しでの良好な視認性確保を踏まえた視距離設定による客席計画としています。282席の小ホールはロールバックチェアを採用し、プロセニアム形式から音響反射板形式、平土間形式、センターステージ形式と多種多様な用途に対応した市民芸術の発表・創造の場を提供しています。 ユニバーサルデザインにも積極的に取り組み、地元市民団体を中心にヒアリングを行い、入口や段差を目立たせる色彩計画やデザイン、聴覚障害者に対する鑑賞補助システムの導入、緊急情報の提供の手法など、分け隔てなく様々な人々が利用可能な文化施設をめざしました。
大ホール

舞台設備計画

大ホール
規模の異なる演劇やミュージカル等の舞台芸術の公演から、クラシックコンサートや集会・大会まで幅広い利用が求められた多目的ホールです。このためプロセニアムには、多様な公演に応じて高さを可変できる昇降式機 構を採用し、プロセニアムの裏側に配置したティザー及びウイングの機構により、プロセニアム開口の調整を可能としました。主舞台上部には照明バトン類の他、多様な演出を可能とする静音型可変速電動巻取りマシン(昇降 速度0.3~90m/分)による吊物バトン21本を整備し、音響反射板は分割して格納しています。舞台中央部にはオーケストラひな壇としても利用可能な大迫を整備し、大型倉庫として設けられた奈落間との備品類運搬を簡便に しています。舞台照明設備については、多様な演目利用 を想定し、各所にコンセント等の負荷設備が配置され、外部からの持込み機器への対応にも配慮しています。調光設備では、各種異常を瞬時に検知できるインテリジェント機能を持った調光器が採用され、またデジタル調光操 作卓の整備により、舞台袖におけるさまざまなシーンヘの操作対応が可能となっています。
小ホール
小規模ながらも、演劇をはじめとする舞台芸術の公演から音楽利用まで多様な利用が想定されています。舞台機構設備としては、吊物バトンや照明バトンの他、良好な音楽空間を実現するために音響反射板も設置しています。舞台後壁を正面反射板とし、演技・演奏空間に影響しない ホリゾント幕の裏に天井反射板を格納しました。側面音響反射板はプロセニアム形式の舞台を構成する袖パネルとしても使用できるように整備しました。客席前方に設けた客席段床を構成するための客席迫機構により、平土間形式やセンターステージ形式への可変を可能としましたた。舞台照明設備については、各種形式に大きく可変するホール空間に対し、あらゆる角度から十分な投光が行えるように、各投光スペースにコンセント等が配慮されています。調光設備は、大ホールと同様にインテリジェント調光器・デジタル調光操作卓を整備し、操作性を含めて大ホールとの互換性を考慮した機器が整備されています。電気音響設備については、大小ホール共に技術の進歩を踏まえたデジタル卓の採用、充分な音量音質で、隅々まで明瞭に拡声できるスピーカシステムが採用されています。
小ホール

建築音響計画

大ホール
舞台開口幅、客席サイズ、視距離等の要件から生まれた幅の広い客席空間でありながらも、1階席中央に反射音が届くよう、音響シミュレーションにより、壁面形状やバルコニー席形状を求めました。RC庇形状のフロントサイド投光室の床スラブには、客席に反射音を返す音響庇としての効果をもたせています。この庇小口を水平に伸ばして客席壁面デザインの基調としており、反射音が客席でより有効に働くよう、細かなボーダーをフィン状に突き出しています。その他、音響的な拡散効果と反射効果を期待した台形断面形状の幅が異なる縦リブをランダムに設けており、音響的機能をデザインとして取り込んでいます。
小ホール
多様な催物を考慮した客席上部の4本のキャットウオークはデザイン的に下面を曲面とすることで、平土間時の上下間フラッタエコーを防止しています。また、2階ギャラリー天井ルーバー内の見えない部分を傾斜させ、1階客席への反射音を増やしました。1階壁面には、その奥行きと幅をランダムに設定した縦リブを設け、音の拡散と平行面によって生じる音響障害防止に配慮しました。大ホールと小ホールとの間には、管理通路を計画すると共に、構造的なエキスパンションジョイントを設け、小ホールでは防振遮音構造を採用することで両ホールの遮音性能を高め、多くの演目に対して、2つのホールの同時使用を可能としています。
断面図