キャンパス整備事業
新たな時代に対応した教育体制を展開
同志社大学は1875年新島襄が旧薩摩藩邸を譲り受け「同志社英学校」として設立され、
1920年には大学令による同志社大学を開校しました。それ以来、今出川キャンパスは当時に建設された
レンガ造りの洋式建築が残る伝統と歴史を感じさせる空間として、市民に愛されてきました。
大学の発展に伴い学生数は増加しましたが、市街地の大学の新築・増築を制限する「工業(場)等制限法」により
今出川キャンパスでの拡充が出来ませんでした。
1986年京都市内の限られた敷地の今出川から京田辺市に施設移転を行い、
この20年で大きく成長を遂げてきました。
2002年にこの法律が廃止され、隣接地にあった同志社中学校が岩倉に移転したことで、
中校舎跡地およびグラウンドを利用した新棟建設が可能となり、大学創立の地に回帰できる環境が整いました。
また、同時期に今出川キャンパス北側に位置する京都市繊維試験場の跡地を取得、烏丸キャンパスとして更なる拡充整備が可能となりました。
今回の整備事業は、京田辺キャンパスを学習校地としていた文系学部の1・2年次生を
今出川に回帰させ、学部教育を一校地で一貫して行うことを目的としています。
今出川キャンパスはゼミナールを中心とした専門教育を展開する文系学部の教育拠点として「良心館」、
烏丸キャンパスには「志高館」を新築しました。
今出川キャンパス内の既存棟の耐震改修、重要文化財建物の復元改修及び外構整備などを含めて
「今出川キャンパス等整備事業」として新たな時代に対応した教育体制を展開することになります。
景観整備計画
キャンパス空間の再生
京都御苑・相国寺から続く緑豊かな地域景観に調和した今出川キャンパスは、
重要文化財のレンガ建築を持つ京都でも有数の歴史的景観資産となっています。
この特徴的景観を生かし、魅力的なキャンパス空間への再生整備を目指しました。
パーパスロードに面した中学校舎跡地は、同志社大学設立時からある「彰栄館・礼拝堂・ハリス理化学館」に面することから、
同志社創世期の原風景を取り戻す憩いの空間・学生たちが集い語らう芝生広場「サンクタスコート」として再整備を行いました。
また、構内景観整備として、西門からクラーク記念館に向かって東西に伸びる今出川キャンパスのメインストリートは、
自転車置場を兼用していましたが、緑豊かな歩行者専用のアメニティ園路として改修し、「パーパスロード」と名づけました。
キャンパス南側より サンクタスコート・良心館・彰栄館・礼拝堂を望む
重要文化財の保存再生・再整備
創建当時の姿への回帰
今回の整備に併せて、キャンパス内にある重要文化財建物である
礼拝堂・ハリス理化学館・彰栄館の改修を行いました。
礼拝堂は内部の椅子・照明器具を創建当時の意匠に改修しました。
スロープの設置などバリアフリー対応も行い、改修後は式典、講演会、卒業生の結婚式などに利用されています。
ハリス理化学館は、重要文化財指定されている外装には手を加えず、
館内全体を展示施設として改修しました。
同志社の歴史を伝える展示室や企画展示室を設け「ハリス理化学館同志社ギャラリー」として生まれ変わりました。
彰栄館は今回の整備による中学校の移転に伴い、増築部分を解体撤去することで創建当時の彰栄館の姿に戻すことになりました。
1891年 レンガ建物3棟
(提供:同志社社史資料センター)
パーパスロード整備計画
継承と創出
キャンパスを東西に横断するメインストリート「パーパスロード」は従前の緑豊かな景観を保存し、
植栽には出来る限り手を加えず、卒業生の思い出となる景観を継承しています。
新たに整備されるサンクタスコートや良心館周辺は、既存のクスノキやヒマラヤスギなどの常緑樹に加えて、
カツラ、カエデなどの落葉樹を入れることで、季節感のあるキャンパス景観を目指しました。
床舗装はアスファルト舗装から大版インターロッキングブロックに改修することで、西門からクラーク記念館までの景観軸を明確にし、
建物周辺にはベンチを増設することで学生が憩える滞留スペースとしています。
また、分散されていた掲示板は設置位置を集約し、屋外サインはデザインの統一を図りました。
屋外照明についても同様に整備を行い、同志社のシンボルをデザインした電球色のポール灯を新設しました。
礼拝堂、ハリス理化学館、彰栄館などレンガ建物やシンボルツリーをライトアップすることで、歴史を感じる落ち着いた雰囲気を創り出しています。
担当者コメント
同志社の建物といえばレンガ造りで有名です。当然、良心館もそうあるべきだと考えていました。
レンガは、エイジングによる変化が生まれる素材です。既存の建物は既に歴史があり、歩調を合わせる
意味で、敢えてイギリス産のレンガを使用しました。
レンガを使いながら、キャンパス側は既存の建物に馴染むクラシックな顔、
一方で烏丸通に面する側には通りの象徴となるような新しいモダンな顔という、2つの顔づくりが外観デザイン上の重要なコンセプトでした。
京都らしさも表現するために、縦格子を取り入れた大きな軒で深い陰影をつくっています。
伝統を受け継ぎながら、新しい顔づくりが出来たと考えています。
学生にとって心地の良い居場所づくり・場所づくりを目標としています。
学生は、学部棟での授業以外はここでほとんどの時間を過ごすため、ちょっとした場所にも
必ずベンチやテーブルやイスを用意しています。
大学のキャンパスが「もっとここに居たい」場所となる事が重要と考えています。
良心館が完成して1年が経ちましたが、このキャンパスでの過ごし方は学生自身がどんどん見つけてくれているようで嬉しいです。
学生の学習意欲を掻き立て、キャンパスに馴染み、20年30年経って懐かしんで貰えるそんな施設になればいいなと思います。