子どもたちの視点でつくる
依然としてアメニティーが低く、ローコスト建築である学校も「開かれた学校」をキーワードに小学校のオープンスクール、中学校での教科教室型学習プログラムの採用により学校施設も大きく変化しました。「地域社会に開く」ことも、コミュニティースクールの概念により地域と学校がともに子どもを育て、ともに見守るシステムも確立し始めています。
中学校では校区自由化も提言され、「子どもたちのよりよい育みの環境を創造することで豊かな地域社会の実現をめざす」ことが重要な課題であります。「サステナブルなまち育て」の究極は、その校区の子どもを増やし続けることであると叫ばれています。
未来の学校づくりを「子どもたちの視点でつくる」謙虚な姿勢で創り続けることが求められる「時代でもあり社会環境」でもあります。
CO2排出量を約60%削減
豊田市立土橋小学校
土橋小学校ではエコ改修に伴い、日射遮蔽ルーバーや躯体の断熱化を図り、校舎への省エネ器具や太陽光パネルなどの設置を導入しました(ハード整備)。 これらの「ハードの整備」によるCO2削減量をシミュレーションにより算定し、設計時試算として-16%と想定しました。 改修工事終了後おどろいたことに、1年間のエネルギー消費量を計測すると、 実績値は設計時の想定を大きく上回る約60%のCO2削減となっていました(設計時試算よりさらに約50%の削減)。
地域との協働による里山再生
豊田市立浄水北小学校
人口が急増する新興住宅地に新築される浄水北小学校。 その敷地の一部にまとまった雑木林があります。 昔は地域の子どもたちの遊び場でしたが、その後手入れがされず、荒廃した状態となっていました。 小学校の誕生を機に、里山を地域の力で再生させ、子どもたちや地域の方の活動・学習の場にすべく、 建築設計と同時に里山整備活動がスタートしました。
中高一貫教育の名門私立女子校
甲南女子中学校・高等学校
90周年を迎えたこの甲南女子中学校・高等学校には2つの大きな特長があります。 1つ目は積み重ねてきた歴史です。既存校舎群は、庭から茶室に至るまで、すべて村野藤吾氏 の作品であり、40 年以上経た今もなお、独特の風合いを醸しながら皆に愛されています。 そして2つ目は恵まれた立地環境です。神戸・六甲の豊かな自然の恵みに抱かれた標高 75mの敷地からは、大阪平野から瀬戸内までパノラマで一望でき、さながら緑に抱かれた 展望台にいるようです。 新校舎の計画にあたっては、これら2つの特長を最大限に活かし、甲南女子ならではの 校舎づくりを目指しました。
エコスクール計画
大口町立大口南小学校
エコスクールとは、環境を考慮した学校施設のことです。 地球温暖化対策が喫緊の課題となっている中、学校施設においても、環境を考慮した施設として、エ コスクールの整備が求められています。エコスクールは、環境負荷の低減に貢献するだけでなく、児 童生徒の環境教育の教材として活用することもでき、さらには地域の環境教育の発信拠点としても先 導的な役割を果たす点で重要です。 エコスクールの整備に際しては、「やさしく造る」、「賢く・永く使う」、「学習に資する」の3つの点に留意することが求められています。
トイレでエコを学ぼう
豊田市立土橋小学校
エコ改修を行った土橋小学校ではトイレ改修を題材にした環境教育にも取組みました。 トイレは水も電気も使う場所で、節水や節電について学ぶのにはうってつけの場所です。 家でも学校でも毎日使う身近な生活空間なので、子どもたちにとってもイメージしやすく、 学校で学んだことを家庭でも活かせる良い教材になります。 さらに、設計ワークショップや施工体験ワークショップを通して、児童や教職員の間にはトイレへの愛着が生まれ、 きれいに、大切に使う意識が芽生えました。竣工後もトイレを題材にした環境教育は継続され、 「先輩が作ってくれたトイレを大切に使う」という気持ちが受け継がれています。
地域産木材の活用
新城市立黄柳川小学校
日本有数の良質材、三河杉をふんだんに使った校舎を計画しました。 森林が豊富であれば木材の調達には事欠かないと思われがちですが、大量の木材を使用するとなると、あらかじめ伐採のタイミングや 乾燥期間などを把握する必要があり、工期や発注との緻密なスケジュール管理が必要となります。 本計画では地元森林組合等の協力により、総量約800m³、木構造及び木工事の90%以上を市内産材でまかない、 地場産業の活性化、地産地消に貢献することができました。