歴史、文化を未来へ伝える免震レトロフィット
横浜の街並みにとけ込み、我が国の建築界に大きな足跡を残した、村野藤吾氏設計の「横浜市庁舎」。昭和34年に竣工してから半世紀の歴史と文化をさらに未来へ伝えることが重要と考え、免震レトロフィットを採用することとしました。免震レトロフィットの採用により、通常の耐震補強のように外壁面や内部空間に耐震ブレースや耐震壁が追加されることなく、外観や当初のコンペにおいて村野藤吾案が採用される理由の1つであったろう市民広場などの内部空間についても、当時のままの姿を残すことができました。
免震レトロフィットの概要
市庁舎周辺の地盤には厚い軟弱層が存在するため、大規模な掘削工事を行う場合、地盤沈下が予想されます。免震工事を行う行政棟は杭基礎(4本の柱を1本の井筒基礎で支持しています)しかし、隣接する市会棟は直接基礎となっています。このため、大規模な掘削工事や基礎下部分の工事を必要としない地下1階柱脚免震工法を採用しました。免震装置は積層ゴム支承、U型ダンパー付積層ゴム支承、弾性すべり支承を使用していますが、この3種類の免震装置を建物と地盤を切り離した間に設置することで、地盤の揺れが長周期化し、地盤の揺れが和らぎ、建物全体が大きくゆっくりと揺れることになります。このような免震工法によって、震度6強の大地震による地盤の揺れを建物では震度3程度の揺れに低減することができます。
施工手順