北の大地に根ざした雄大なスタンドと
競馬ファンが一日すごせる施設

ピックアップ

日本中央競馬会 函館競馬場

設計コンセプト

「リゾート地の開放感あふれる競馬場」を基本理念とし、スタンド上部庇は、真っ白な雲をイメージさせる波打つ天蓋を広げたデザインとしました。津軽海峡を望む立地とあいまって、牧歌的雰囲気を感じさせるものとしています。また、建物へのアプローチ部分には、馬場へと視界が広がるようなオープンな計画をしています。ここには、馬と人が気軽にふれあうパドックを隣接して設け、路面電車通りからも競馬の活気が感じられる、「馬と人との距離が近い競馬場」を目指しています。

建物概要

発注者 日本中央競馬会
所在地 北海道函館市駒場町
用 途 競馬場 / スタンド
構造・階数 鉄骨造・5F
延床面積 26,251 ㎡
竣工年 2010年
備 考 設計JV:JRAファシリティーズ株式会社
撮影:(有)フォトスタジオ嵯峨
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1年を通して楽しめる競馬場

階構成としては、1~2Fを通年使用エリア、3~4Fを競馬開催中使用エリアとしています。お客様は、入場門を通ってエントランスにあるエスカレータにより2Fファンエリアに至る計画としています。また、1年を通して競馬を楽しんでもらうため、競馬開催時に使うトータボードを場外発売時の映像装置として活用しました。パドック側の室内には、多様なニーズに対応できる数種類の座席を多数配置し、情報体感スペースとしての機能を付加しました。これにより、ファンは、1年を通して快適な室内空間で競馬観戦をすることができます。
1階エントランスホール
2階屋内パドックシートを見通す

酸化チタンコーティング膜を天井材として使用

開放感ある北のリゾートとして、2Fファンエリアは、開放感と北の大地のおおらかさを感じる空間をめざしました。開放感の中に人をやさしく包み込むような空間、雲のような包容力ある空間を実現するため、天井材には、酸化チタンコーティンク膜を採用しました。

雲をイメージした全長100mのシームレスなうねる天井は、壁の木材ルーバーと組み合わせることで、軽やかでさわやかな空間を創出しています。また、馬場側ターフサイドの軒天井にも膜材を採用することで、耐塩害性と耐震性の向上に努めました。
芝生席よりスタンドを見る

迎え入れる入場門

競馬場の最初の顔として、視認性があり、訪れる人をやさしく迎え入れる入場門をめざしました。入場門としての高揚感をもちながらも、構築物としての存在感を消すことでお客様が自然に2階へと導かれる空間をめざし、電車通りからの開けた視界の中にさわやかな杜がたたずんでいるようなイメージで計画しました。 外部空間と内部空間を緩やかに結びつけるねらいから、木々に見立てた鉄柱は、ジョイン卜部に鋳鉄を採用しスレンダーな形状とするとともに、柱の位置は規則性を感じさせないランダム配置としました。
アプローチより入場門を見る

構造計画

構造概要
函館競馬場は、スタンド本体・事務所棟・入場門で構成されています。事務所棟は、スタンド本体とExp.Jで接続し、入場門は、スタンド本体の3階に接続し一体構造とし、主体構造は鉄骨造のラーメン架構としています。

スタンド架構
屋根が約21.Om、4階床が約16.Omスタンドから跳ね出していることがスタンド架構の特徴となっています。4階部分を利用してトラス梁を構成し、屋根および4階の床を支えています。地震時の水平力に対応するために、トラス梁の斜材の一部に座屈拘束ブレースを採用しています。居住性を高めるための上下方向の振動対策として、4階床にパッシブ型上下用同調質量ダンパー方式の制振装置を設置しています。
入場門の屋根は樹木をイメージした10本の柱で支えられています。樹木柱は、下部が1本の溶接組立箱型断面柱(300角~500角)、中間部が4本の鋼管(216.3Φ)、上部が8本の鋼管(165.2Φ)で構成し、中間部と上部の柱の接合部には鋳鋼を用いています。 屋根架構は、H形鋼の格子梁で構成している。樹木柱と屋根架構の接合部は、曲げ加工した鋼管のリングになっており、このリングを介して屋根架構の鉛直荷重を樹木柱に伝達しています。リングの大きさは、約3.200Φと4.200Φの2種類とし、このリングを利用して膜屋根のトップライトを設けています。 屋根面には水平ブレースを配置し、地震時の水平力はこのブレースを介し、スタンド本体と樹木柱に伝達しています。樹木柱の下部柱には耐火塗料を施しています。
西側全景

設備計画

コ・ジェネレーションシステム
商用電力の特高引込の回避及び契約電力の低減を図るため、都市ガス(天然ガス)によるガスエンジン駆動の常用発電機(500kW×2基)を設置しました。運転は電力ピークカットを目的としていますが、稼動時の排熱は空調システム(ジェネリンク型冷凍機、温水熱交換器)において有効に熱回収利用を行っています。 本施設は円滑な競馬開催を意図して、上記常用発電機に加えて非常用発電機(A重油焚き)を別途設置しました。商用電源に加えて発電機による系統の多重化により、電源供給の信頼性向上を図りました。商用電力の障害時においても約80%の電源の継続供給が可能です。   
自然環境の有効利用
函館地区の夏季最高外気温廣は30℃前後です。競馬開催中(6月中旬~8月中旬)他、夏季の外気条件の良い日には、客溜り頂部の排煙用トップライトを開放(中央監視室よりの遠隔操作)して、ドラフトによる外気を誘引導入することにより自然通風による涼房を可能としています。 客溜りに配置した天井トップライト、パドック側のフルハイトガラスによる自然光の積極的な取込により、冬季の降雪時においても大変明るい室内環境が実現できました。
消費エネルギーの縮減対策 効率的な設備システム・機器の採用により、消費エネルギーの縮減を図りました。照明はLED器具を積極的に採用しました。さらに、各種照明制御(人感、初期照度補正、他)の採用により照明用電力の縮減を図ることができました。 空調においては、高効率機器の採用と併せて、各種自動制御による搬送動力の低減、熱源機器の効率運転を行っています。寒冷地において空調負荷の大半を占める外気負荷については、室内空気質を計測しながら適性量の外気を導入することにより、エネルギー消費の無駄を防止しました。また、地中に構築した電気(クール・ヒート)トレンチを介して外気を導入し、取入外気と地中との熱交換(地熱による夏季は冷却、冬季は加熱)による外気負荷の低減を図りました。