紀北町の魅力が伝わる外観計画
高速道路から一目で視認できるように、また、紀北町の魅力がダイレクトに伝わるように、インパクトのある外観計画としました。駐車場に沿って細長い敷地をそのまま活かし、フロンテージのあるボリュームで来訪者を受け止める建物配置としました。そこに、海や山などの自然が織りなす起伏ある景観をそのまま表現した、大きなうねる一枚屋根をかけました。一枚屋根という形態は、多雨地帯において漏水の心配をなくすとともに、軒を出したデザインとして外壁を保護する機能も担います。建物前面には、町内に残る熊野古道の石畳をモチーフにした軒先空聞を通し、木と石に包まれながら来訪者を施設へと導くアプローチ空間としました。
町の木の文化をアピール
平面構成はシンプルに、建物中央に各室が面する吹抜空間「交流広場」を設け、その両側に1階は店舗と食堂、2階は多目的室を2室計画しました。交流広場壁面には町の観光マップが組み込まれ、休日には観光案内人がブースを出して町をPRしています。多目的室は展示やイベン卜利用の他、災害時には町役場のバックアップオフィスとしても機能します。
木造2階建の建物は構造材、内外装材ともすべてに紀北町産の桧を使い、町の木の文化をアピールするとともに温かみのある空間となっています。地元の材を地元の大工の手でつくることができるよう在来軸組工法とし、さらに大断面材や集成材を使わないことで、つくりやすい・加工しやすい架構としました。吹抜や多目的室など、スパンの大きな大空間が要求されるため各層とも卜ラス構造とし、うねる大屋根は同形状のトラスをスパンごとにせいを変えて計画しました。
内部も真壁をベースとし、木の存在を十分に感じられるようにしました。これらの木材は材工分離発注とし、事前に木材を調達することで必要量を確保しました。一枚屋根は夕刻には照明で浮かび上がり、高速道路を見守る燈寵としても存在します。店舗の営業時間外も24時間利用される、非常に公共性の高い施設であるからこそ、さりげなく人々の記憶に残る施設となってほしい。来訪者が紀北町の魅力に自然と触れ、地域活性化のきっかけとなることを期待しています。