紙を織り上げたサスティナブルなシェード

透明膜からの自然光を適度に遮蔽するために、リサイクルパルプから撚糸(ねんし)を制作し、縫製加工により織物状にした「和かみシェード」という日射遮蔽素材を関西圏のメーカーおよび商社の開発協力のもと制作しました。リサイクルパルプは、カートンパックや広島平和記念公園に寄贈された折り鶴を主体とした国産紙をベースとしています。紙をスリッド状に裁断して撚り合わせた撚糸を織ることで、直射日光を遮るだけではなく、柔らかな拡散光を創出します。和かみシェードと、屋根をつたう流水を透過した幻想的な光に包まれたアトリウムを中心とし、次世代の環境共生建築が体感できるパビリオンを目指しました。

淀川のヨシと紙おむつから生まれた紙管

トイレの天井仕上材として、淀川河川敷にある鵜殿のヨシ原に生えるヨシと、紙おむつを原料とした紙管を使用しました。淀川のヨシは雅楽の篳篥(ひちりき)のリードに使われる等、大阪の伝統ある素材です。また二酸化炭素の吸収や水質浄化の作用もありますが、近年は十分に活用されず保全が困難になっていることから、紙や衣類等の様々な利活用が研究されています。地元材料を活用することによる大阪らしさの発信も目的としています。一方紙おむつは、原料としては上質なパルプが使われているにも関わらず、リサイクルが難しいため、多くが一般廃棄物として捨てられていました。しかし、近年では技術の発達により、リサイクルが可能となってきています。以上のヨシとおむつから生まれた2種類のリサイクルパルプを混ぜ合わし、紙管の表面紙の原料として活用しました。未来では、自然素材やリサイクル素材を活用した建材が当たり前になることを期待しています。

複雑な形状を可能とするコンピューテーショナルデザイン
膜屋根を構成する各曲面は数種類の半径から成る球体同士をトリミングして生成した球面により構成されています。球面とすることで透明膜のフィッティングや、トラス構造の割付が容易にできるように設計しました。作成した3Dモデルは現場との情報共有だけではなく、水流や環境のシミュレーションにも活用しました。
膜屋根を支える木らせん柱は、DNAから着想した二重螺旋形状であり、複雑な曲面を木材で構成することが大きな課題でした。3Dモデル上で木材の一枚一枚までモデリングし、詳細な部材寸法まで定義することで、設計および施工段階においても的確な意図伝達を可能としました。曲げた木材は極力減らし、基本的には平面の木材で二重螺旋形状を実現させることで、意匠性とコスト合理性を両立させました。

