学校づくりから「学びのコミュニティ」づくりへとつなげる挑戦

ピックアップ

豊田市立浄水北小学校

設計コンセプト

愛知県豊田市では、「共働」というコンセプトのもとにまちづくりを進めています。本校は人口急増による分離新設校ですが、豊田市初の試みとして、この考え方を取り入れた「地域共働型学校づくり」の主旨のもと計画を進めています。これは、新しい学校づくりを通じて地域、学校、家庭がつながり、お互いに助け合い育ちあう、生涯学習を通じた「学びのコミュニティ」の創造が最終目標です。メインの議論の場として、地域住民、自治団体、学校、行政、専門家が集まる整備検討会「おいでんの会」を月1回程度開催しています。議論の中で見えてきたことは、「地域共働」といえども、まずは子どもの教育の場として、子どものためにという視点を忘れないことです。その中で地域がどのように関わることができるか、できることから少しずつはじめていく重要性が確認され、校舎完成前からいくつかの活動がスタートしています。このプロジェクトでは、地域の主体性をいかに引き出すかが重要となります。地域にとっても、学校にとっても、負担に感じてしまっては成り立たない。お互いがメリットを共有できるWIN-WINの関係を目指して学校づくりはこれからも進んでいきます。

建物概要

発注者 豊田市
所在地 愛知県豊田市
用 途 小学校
構造・階数 鉄筋コンクリート造 / 鉄骨造・3F
延床面積 9,648 ㎡
竣工年 2014年
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使い方や活動から考えるデザインプロセス

「おいでんの会」のテーマで特徴的なのは、単に建物のプランについて議論をするのではなく、その場での使い方や活動をベースとして議論を進めるプロセスをとっている点です。これは、青写真を描いた過剰な施設投資を防ぐ、完成後のしくみづくりにつながる、参加者が自分たちの視点で学校づくりへの意識を高めることができる、などの効果を狙っています。具体的な絵がない状態で議論をすることもあるため、いかにイメージしやすくするか、ワークショップ実施時には注意を払います。昨年度は校舎の設計と連動し、ソフト面では学校づくりのコンセプトとしくみについて、ハード面ではその議論を受けた設計への反映点の検討と外構基本計画の策定をテーマとし、設計スケジュールと連動させてテーマを移しつつ議論を進めました。2012度は活動の実践を進めるため、敷地内にある里山の整備活動「じょうすいのもり隊」を本格的にスタートさせるとともに、外構設計やしくみづくりについて継続的に議論を行いました。
地域の方がデザインした募集チラシ
「おいでんの会」の皆さんと

プロセスに合わせた特別な実施体制

実施体制として、設計担当者とは別にワークショップ担当者を擁立しています。ワークショップのファシリテーターは中立性を求められますが、一方で業務内容を深く理解するとともに専門性も要求されます。社内で上記の体制を組むことで、設計段階に応じた緻密なプログラムを設定し、密な連携を図りつつ中立性を保っています。また、名古屋市立大学の鈴木賢一教授にプロジェクト全体のアドバイザーを依頼し、研究室の学生もワークショップに加わっています。
担当者

地域に入り込み、地域とともに歩む

今回のプロセスにおいては、地域をよく知り、地域に入り込むことを意識しています。自治組織へのヒアリングや、地域行事へ積極的に参加し学校づくりをPRするなど、顔の見える関係性を築いてきました。2012度からは「おいでんの会」とは別に、住民有志によるコアメンバー打合せを不定期で開催。「じょうすいのもり隊」や地元夏祭りでのPRなどでは、プログラム構成や展示パネル・チラシ・かわら版の作成、運営スタッフなどに住民が直接関わり、地域に根付いた活動への道筋をつくりました。また、既存の地域活動との連携も進め、より地域の主体性を育むとともに、学校と地域をつなぐ新たな運営母体の設立を目指しました。
自治区夏祭りで賑わうPRブース
里山整備の実践

ハードへの反映

ソフト面をベースとした議論の中で、ハード面の内容を設計に反映させてきました。例えば校舎内に地域活動の中心となる「地域支援室」を設置することや、子どもの落ち着いた学習環境の確保、段階的に地域開放可能なゾーニングなどが挙げられます。また、学校としての詳細な使い勝手などの意見は別途学校教員と協議し、合わせて設計に反映しています。外構については地域の手で考えたり開校に向けて徐々に育てる部分をつくり、継続した地域の参加を目指しています。
ワークショップの様子
おいでんガーデン