歴史を継承し 未来を拓く
~キャンパスイメージの継承と新たな顔づくり~

ピックアップ

甲南女子大学10号館

設計コンセプト

甲南女子大学は、村野藤吾氏が開学当初からキャンパス全体の設計を行っており、今もほぼ全てが現存する全国でも稀有な事例となっています。外壁の「ブッツケスタッコ鏝押さえ」、陰影のある独特の窓廻り、池のある前庭の芝生、スキップ状の芝生広場等、見応えのある意匠が、今もキャンパス全体に広がっています。
学園創設100周年事業である10号館の計画にあたっては、「歴史を継承し、未来を拓く」というテーマを掲げました。
キャンパスの群造形との統一感を持たせるため、素材・色彩・窓廻りデザイン・ピロティ等の外観要素の全てを継承しています。独特の風合いのある外壁仕上げについても50年の歳月を経て再現し、女子大学らしい淡いシェードの優しい印象を目指しました。

受賞

【2018】平成29年 照明普及賞

建物概要

発注者 学校法人甲南女子学園
所在地 神戸市
用 途 大学
構造・階数 鉄筋コンクリート造 / 鉄骨造・6F
延床面積 9,546㎡
竣工年 2018年
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未来を拓く⇒キャンパスの新たな顔づくり

メインの正面ファサードは、村野藤吾氏のデザインモチーフである、量塊感と透明感を併せ持つガラスブロックを全面に積み上げ、キャンパス景観に配慮しながら、未来を拓く象徴的なデザインとし、「清く・正しく・優しく・強く」という甲南女子大学の教訓を表現しています。
エントランスホールには、甲南女子大学の学章をモチーフとした光壁のアルミキャストを設置しました。これも村野氏が多くの作品で使用した、京都の工房で制作しています。
軽快に積み上げた、ガラスブロック全面を浮かび上がらせた正面ファサード
甲南女子大学の学章をモチーフとしたエントランスの光壁
村野藤吾氏設計の管理棟との連続性を保つため、ピロティ列柱の柱寸法や仕上材を合わせている
構造計画
既存校舎は耐震壁が多く、今後の学部再編等に対応できないため耐震壁を北側の一部に集約し、南側は完全なワンルームとなるよう、フレキシブルな構造計画としました。これにより、エントランスの吹き抜けピロティや、透明感のある正面ファサード(全面ガラスブロック)を実現することができました。
  
構造、給排気ダクト、照明器具を納めたテーパー天井
高度地区制限や、既存キャンパス景観との調和を重視し、絶対高さ20m以下に抑えるために、床を全てPCa床版で構成しており、階高3.5mの中で床版裏3.3m・リブ底2.9mを確保しています。また、キャンパスが山の手にあるため、搬入できる工事車両が限られるため、同じ型枠のPCa床版を背合わせで使用することで、ローコストながら1枚のPCa床版の重さを3トン未満に抑え、限られたヤードでの工事が可能となりました。
幅955ミリ、長さ9500ミリのPCa床版を背合わせで使用
  
PCa取り合いディテール
設備計画
建物のスカイラインを保つため、室外機を建物北西に集約して積み上げ、屋上に一切設備機器を突出させない計画としました。空調がフル稼働してもショートサーキットが起きないようシミュレーションを行い、設備スペース内の壁や床の位置を決定しました。
スカイラインを保った屋上。南側に阪神間を一望できる屋上芝生広場(天然芝を使用)。
屋上の金属屋根は、芦原講堂と同じ緑青としている。