市民に開かれた駅前拠点施設が既存のまちを活性化する

ピックアップ

パピオスあかし
(明石駅前南地区第一種市街地再開発)

設計コンセプト

当再開発事業は、市役所窓口や図書館、子育て支援などの行政サービスや公益施設をはじめ、商業・業務系施設、集合住宅を整備するとともに駅前広場を再整備し、明石市の新たな顔づくりを行うものです。また、計画地の南にある今も活気あふれる魚の棚商店街へと続く往来を作り出す通り抜け街路を整備し、さらなるにぎわい創出を目指しています。

受賞

【2018】 兵庫県第19回人間サイズのまちづくり賞
「知事賞」 (ユニバーサル部門)

建物概要

発注者 明石駅前南地区市街地再開発組合
所在地 兵庫県明石市
用 途 店舗 / 事務所 / 図書館 / 共同住宅 / 駐車場 / 駐輪場
構造・階数 鉄骨造 / 鉄筋コンクリート造 / 鉄骨鉄筋コンクリート造・34F / B2F
延床面積 65,850㎡
竣工年 2017年
備 考 東畑建築事務所・大林組設計共同企業体
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【事業整備方針】

中心市街地活性化基本計画に基づき、都市機能の増進及び経済活動の向上を総合的かつ一体的に推進します。計画の大きなポイントのひとつとして、従来の「土地の高度利用・不燃化・公共施設整備」を目的とした市街地再開発事業に留まらず、これまで親しまれてきた界隈性のある商業集積などを継承しながら、駅前立地に相応しい新たな機能を充実させることで「南に広がるまちへの人の流れ」をつくりだし、明石駅の「南玄関口」を再構築します。

【施設配置計画】

中層の施設棟(商業・業務施設、公益施設など)と超高層の住宅棟を3層吹き抜けの公共広場でつなぐ構成としています。
施設棟は駅側からの商業施設・公益施設への視認性と利便性を考慮し敷地西側に配置、住宅棟は駅北側の明石公園方向から南の淡路島や明石海峡大橋への眺望を確保するため東側に配置しています。
中心となる公共広場は明石駅プラットホームに正対する建物中央2階に設け視認性を高め、駅前と魚の棚商店街を中心とした南に広がるまちを繋ぎ人の流れを創り出すゲートとして機能を持たせました。1・2階には南北を貫く自由通路を設け、2階歩行者デッキを東へ伸ばすことで周辺街区との連続性を高めています。

【施設機能計画】

施設棟1~3階は従前の飲食店をはじめとした「食・人・街」を育む飲食・物販・サービス系店舗、業務施設、4~6階には市民サービスの充実を図る公益施設(子育て支援施設・市役所施設・青少年育成施設・図書館)で構成しました。公益施設には1階から直結する専用出入口を設け、単独利用に配慮しています。
また住宅棟(約220戸の分譲住宅)は4階以上に計画し、独立性を確保した住宅専用のメインエントランスを1階東端部に配置、ビューラウンジやゲストルーム等共用施設も設け、付加価値を高めています。構造的には居住性を高めるデュアル・フレーム・システム(DFS構造)による制振構造を採用し、このシャフト状空間スペースには入居者用立体駐車場が収められています。超高層の住宅棟(DFS構造)と構造的に分離した施設棟は、保有水平耐力を一般建物の1.25倍の耐震安全性を確保しています。周辺からも視認できる屋上緑化や太陽光発電設備を設置しています。そのほか環境負荷軽減を図る外装材や建築設備機材・設備システムの採用、ユニバーサルデザインの実践などにより環境・ひとにやさしい施設を目指しています。

【景観計画】

公益施設・商業施設・住宅からなる官民複合施設として以下のテーマを掲げています。
■『親しみやすさ』の創出
・「ゲート性」:南北の抜け(見通し)を意識し「まち・ひと」に開かれた公共広場として、再開発ビルへの来訪者を迎え入れる景観を創出する
・「透明性」:ガラスカーテンウォール・トップライトにより奥行き感のある開放的な屋内型公共イベント広場とする
・「わかりやすさ」:施設機能(用途)が視認される開口部と壁面で構成する
■『環境調和』
・「ヒューマンスケール」:長大な壁面を垂直・水平方向とも適度に分節し、威圧感を軽減する
・「緑の工夫」:段上に繋がる屋上緑化が変化のあるスカイラインを構成する
・「明石らしさ」:明石の海岸線・海・空などの風景から想起される自然な色彩を採用する
■『永続性のある意匠』
・「遠景~近景への配慮」:大きなボリューム構成から細部の詳細まで多様な視点に配慮する
・「奇をてらわない意匠」:光と影による壁面構成を図る
・「素材を生かす」:様々な材料の素材・素地の自然な色彩や風合いを生かす
■『新しい明石のランドマークタワー』の創出
・明石城・明石海峡大橋・淡路島と調和するランドマークとしての風景を創出する
 

【施設棟の計画】

建物中央、駅前広場に面する2階屋内公共広場は様々なイベント会場や市民の憩いの場となります。商業・業務・子育て支援施設や図書館などはこの広場に面する構成とし、多様な交流が育まれることを意図しています。広場全体が、JRと山陽電鉄のプラットホームから見渡すことができるガラスファサードは明石市の清新なゲートとなります。また施設1階には従前、エリア内にあった明石焼き、寿司店などがひしめき合っていた路地を迷路性のある界隈空間に再構築しました。
 
「明石市民図書館」
市民図書館の更新拡張整備により市民が本とふれあう機会を高め、複数ある既存図書館との連携構築を図ることで図書館機能の充実を図っています。
​「子育て支援施設・青少年教育育成施設」
未就学児童の健康福祉・保育施設、就学児童及び青少年のための教育育成施設を駅前に整備することで幅広い年齢層の市民サービスの充実を図っています。
「市役所窓口・保健窓口施設」
日常的な市民サービス機能施設を拡充整備し、駅前ワンストップサービスの充実度を高めています。

【住宅棟の計画】

連結制振構造を活用した構造システムを採用することで、住戸内の無梁無柱空間を実現し、自由な間取りプランを可能としています。またこの高い制振性能により、耐震・耐風に対する高い安全性を確保し、高品質な住環境を提供しています。低層階には、明石城の緑地を眺めるコミュニティ空間、高層階には明石海峡大橋を望むスカイラウンジを設けました。