風景を楽しめる『居心地の良い閲覧スペース』

地域に親しまれる図書館には、気軽に訪れて思い思いに過ごすことができる多様な居場所があります。北東の山並みやアンパンマン列車の風景を楽しめる、おしゃべり可能な閲覧室では、子どもも大人も分け隔てなく自分のスタイルで過ごすことができます。閲覧室の中には、静かに過ごしたり、グループで集まったりできる個室を散りばめ、地域の木に包まれた多様な居場所が、高さや広がりが変化する屋根の下に有機的に連なるように計画しています。


地域の木が支える『見通しの良いワンルーム』

閲覧室に緩やかな領域性を与える表裏一体の屋根架構。円弧梁と木トラスは、見通しの良いワンルームを成立させる重要な構造体です。
鉄骨梁を円に沿って掛け渡し、円同士をトラス構造で結ぶことで、柱の少ない空間を実現しました。奥行と高さが変化する有機的な軒は、正円を傾けた単純な片流れを組合せ、先端を別の円で切り抜くことで形成。円の両端を固める耐震壁付ラーメン架構(RC 造)を様々な向きに配置して建物全体をバランスさせ、屋根への負担を軽減して架構をスリム化しています。木トラスには、県内加工が可能な香美市産スギ集成材を2 枚合せで用い、豪雨に耐える谷のない滑らかな多面体とすることで、複雑な屋根を気候風土に寄り添う形態へと導いています。


木トラスのスパンが大きい箇所に採用したハイブリッド梁は、間に挟んだスチールが、鉄骨建て方を安定させる役割も担っています。




『ALL 市産材・県内加工』で、地域の木資源を最大限活用する


設計初期段階で森林組合へヒアリングを行い、供給可能な木材量を最大限活用した上で、隣接市で加工可能な種別・部材寸法を選択する方針としています。豊富なスギを構造材(集成材)や内装材(製材)に、ヒノキを建具・家具類(集成材)に使い分け、目に映る全ての木部を香美市産材+県内加工で実現しました。


屋根架構に寄り添い『浮遊する光』

木トラスに沿ってライン型器具をランダムに配置し、架構を際立たせました。意匠性と安全性を両立する特注のサスペンション方式を採用し、浮遊感を保ちながら、全てに耐震補強用の振留めを設けています。円弧内側は、ライティングダクトを木ルーバーに並行配置し、スポットライトとタブレット式無線調光システムを採用して、環境や運用に合せて、場所に応じた明るさを提供できるようにしています。

熱負荷・日射に最適な軒形状



ワンルームを効率よく快適に保つ居住域空調


