設計コンセプト
こうした二つの背景を受け、キャンパス内に学生や教職員をはじめ、地域の方々や実社会で活躍する有識者が活動(クラスター)を行える場・情報の共有を行える場・実学を実践し発信できる場を公共性の高いアカデミックな場(空間)として実現することを多摩大 学25周年記念事業にふさわしいテーマとして、新棟【T-Studio】の計画を進めることになりました。
キャンパス動線の交差点
【T-Studio】を、既存校舎と広場に面して計画することで、既存校舎や広場の活動を受け入れ、相互に新たな関係性を築くことのできるよう計画しました。
三角形のかたち
開放的で軽快な空間とソリッドな表現の両立
2階はよりアカデミックな実学を実践し、多摩地方を中心とした地域社会に発信していく拠点としての【CREATIVE COMMONS】を計画しました。さまざまな活動(クラスター)の受け皿となるようにフレキシブルな空間とし、柱などの構造体を極力消失させ、鋼板耐震壁に支えられた開放的でありながら、周辺環境をピクチャレスクに切り取るソリッドな空間を実現しました。
性格が異なる二つのフロア同士を、シリンダー状の鋼板耐震壁に囲まれた抽象的な階段によって緩やかにつないでいます。この鋼板耐震壁は外部と内部を緩やかにつなぎ、人々や周辺環境を緩やかに建物内に誘い込む役割も担っています。三角形の均一な空間に曲面のボリュームが入り込むことで、建物内外に動きのある空間を生み出しました。
下 / 様々な活動(クラスター)の受け皿となるCREATIVE COMMONS
次代のシンボル
多摩大学【多摩キャンパス】の新しいアカデミックな活動(クラスター)の場が、実社会とつながり、さまざまなフィールドで躍動する次代の人材と価値観を育む場のシンボルとなることを望んでいます。
構造体とディテール
鋼板による三角形・鋼板によるスカイライン・鋼板面の開口部
三角形の平面形態をソリッドで緊張感をもつ鋭利な形態として実現するために、外壁に鋼板耐震壁を採用し目地のないシームレスな表情を目指しました。鋼板面同士を現場溶接にて一体化し、溶接部をパテ処理した後、現場にてフッ素樹脂塗装を行うことにより、厚さ9mmの鋼板耐震壁がもつ素材自体の魅力を活かしつつ、外壁面の雨仕舞の問題をクリアしました。
鋼板耐震壁とアスファルト防水との取合い部となるパラペットを、鋼板耐震壁に対し笠木の鋼板を現場溶接により一体化することで、水密性を確保すると同時にシャープなスカイラインを実現しました。
鋼板耐震壁と開口部の取合いについては、紙をカッターで切り抜いたような表現を目指しました。外壁側から開口部を見た際に、鋼板耐震壁厚9mmの小口の薄さを際立たせるために、サッシ枠を外壁面から後退させ、かつ外壁の背後に納めることで、鋼板耐震壁にガラスが直に納まっているような表現を実現しました。ペアガラスの採用などにより居住空間に求められる熱環境問題を同時にクリアしました。
緩やかな階段
この曲面の外壁に囲まれたシームレスな空間の中に、ササラ(PL-6)壁により支えらえた階段を挿入することで、柔らかで緩やかな空間にシャープでミニマムな階段をつくることを実現しました。
細くリズミカルな柱
既存校舎のもつ重厚感あるRC柱によるピロティと対比させるために、鉛直荷重のみを負担したφ165の柱を採用することで、細くリズミカルな柱が並ぶ軽快なピロティとすることに成功しました。
下 / 既存校舎よりT-Studioを望む