リノベーションRenovation
資産価値の向上と施設管理の合理化
建物には安全性や快適性のほか、常に社会や時代のニーズに応えられる機能や性能が求められます。建物が竣工(完成)後の経年による物理的・社会的性能の劣化を避けられないのに対して、求められる機能や性能は、環境の変化や技術革新により、多様化・高度化していきます。そのため、リノベーションにより、計画的に建物の機能や性能を向上させることが必要となります。
東畑建築事務所は、建物のライフサイクルを通した長期的ビジョンに基づくリノベーション計画により、建物の物理的劣化の改善はもとより、多様化・高度化し続ける社会的要求性能を満たし、お客様の資産の価値向上と施設管理の合理化を図り、社会や地球環境にも寄与する空間に再構築します。
総合的な調査・診断から、適切なリノベーション方針を立案します。
建物の劣化状況や性能レベルを正しく把握するために調査・診断を行います。
建物の用途を考慮した上で、構造躯体、内装・外装、空調・衛生設備、電気設備、昇降機設備にわたって、安全性、劣化度、機能性、環境性、省エネルギー性、メンテナンス性など、総合的な調査・診断を行います。
調査・診断の結果は、修繕の必要性や更新時期の提案など、適切なリノベーション方針の立案や維持保全計画に活用します。
予備調査
竣工図面や各種管理データ、アンケート・ヒアリング、
現地確認などによる調査を行います。
一次診断(総合調査)
予備調査をもとに、主に目視による現地調査、竣工図面や
各種管理データの分析調査を行います。
二次診断(詳細調査)※必要に応じて
必要に応じて各種計測機器を用いた定量的な診断を行います。
(タイル打診調査・引張試験、内視鏡等による診断)
調査・診断報告書
劣化の状況や修繕更新に必要なコストをまとめた報告書を提出します。
二次診断を行った場合はさらに詳細な報告書を提出します。
企画・調査段階から、設計、施工、維持保全まで、お客様をトータルにサポートします。
補強方針 | 補強方法 | 補強を推奨する用途・建物など |
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地震力の低減 | ・免震レトロフィット | 歴史的建築物、医療施設、居住施設、 展示施設(美術館・博物館)など |
・免震床 | 業務施設(コンピュータールーム)、居住施設、 生産施設(精密工場)展示施設(美術館・博物館)など |
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・耐震補強 | 業務施設、居住施設など | |
耐力の向上 | ・耐震壁の増設 | ピロティを有する建物 |
・鉄骨ブレースの増設 | 教育施設、業務施設、居住施設など | |
靱性の向上 (粘り強さ) |
・炭素繊維補強 ・鋼板巻き付け柱補強 |
商業施設、業務施設、居住施設など |
液状化対策 | ・地盤改良 ・地中連続壁の構築 |
地震発生時に液状化しやすい地域の建物など |
豊富な実績と経験で、お客様資産の価値向上を図ります。
地域社会に溶け込み、多くの人たちに親しまれてきた建物を守り、再生させていくことは、スクラップ&ビルドではない循環型社会への転換につながります。
当社は歴史的建造物の保存や再生、新たな社会資本の利用方法として注目されているコンバージョン(用途変更)の実績も数多く有しています。
免震レトロフィット / 横浜市庁舎耐震補強
設計コンセプト
現在の横浜市庁舎は、市政100周年記念事業の一環として建設事業に着手し、村野藤吾氏の設計により昭和34年9月に完成したものでありましたが、既存建築物の耐震診断基準に基づく耐震診断により補強が必要との結果を受け、まず平成14年度に「市会棟」の耐震補強工事を完了しました。そして、今回引き続き「行政棟」の耐震補強工事を完了しました。
免震レトロフィット
耐震補強工事は執務室を使用したまま行う「居ながら」工事を実現するため、執務室内の工事を極力少なくすることができる免震工法(免震レトロフィット)を採用しました。
地下1階の柱脚部に免震装置を設ける柱脚免震を採用しています。
設置している免震装置は、弾性すべり支承、天然ゴム系積層ゴム支承、天然ゴム系積層ゴム支承U型鋼棒ダンパー付きの3種類となっています。
所在地 | 神奈川県横浜市 |
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用 途 | 庁舎 |
構造·階数 | SRC・RC・S造 8F/B2F |
延床面積 | 20,756m² |
竣工年 | 2009年 |
耐震補強改修前・改修後
「建築齢1世紀」を目指したリニューアル / 大阪城天守閣「平成の大改修」
設計コンセプト
現在の大阪城は、1931年に豊臣秀吉時代の天守閣をモデルにして再建された5層8階の鉄骨鉄筋コンクリート造の建物ですが、築後半世紀以上が経過したため、「建築齢1世紀」を目指した構造補強とバリアフリー化を主眼としたリニューアルが行われました。外観は市民に親しまれたイメージのままで化粧直しを行い、内部は最新の歴史博物館としてインテリアデザインと展示内容を一新しました。
所在地 | 大阪市中央区 |
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用 途 | 博物館 / 資料館 |
構造·階数 | SRC・S造 8F |
延床面積 | 5,071m² |
竣工年 | 1997年 |
赤レンガの綿工場の再生 / 熊取交流センター「煉瓦館」
設計コンセプト
旧綿布工場のレンガ壁と鋸屋根を再生し、それらの質感と形態を融合させて交流の場を形成しています。汽罐室をオープンな空間の玄関ホールと事務室とし、長さ約30mのレンガ壁を活用したギャラリーロード、鋸屋根小屋組と保存レンガで綿布工場の形態を内包した交流ホールなどで回遊動線を構成し、どこからでもレンガ工場の質感が感じ取れるようにしました。さらに工場で使われていた設備品を装飾・オブジェに活用し、街の記憶をよみがえらせる内外空間としています。
受賞 | 第26回大阪都市景観建築賞(大阪まちなみ賞) 大阪府知事賞 |
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所在地 | 大阪府泉南郡熊取町 |
用 途 | 交流施設 / 多目的ホール |
構造·階数 | RC・S造 2F |
延床面積 | 2,032m² |
竣工年 | 2004年 |
民間テナントビルの区庁舎へのコンバージョン / 東京都大田区役所
長寿命化
一般的に鉄筋コンクリート造建築物の耐用年数は60年以上と言われていますが、時代の変化に伴い機能的に不適応となるなどの理由によって竣工後20?30年程度で解体される場合も少なくありません。それを、内外装や設備の改修、必要に応じて構造補強などを施すことにより建物本体を有効活用することが、資源保護・廃棄物削減の観点からも求められてきています。大田区役所では、内外装仕上と設備の改修によって民間テナントビルを庁舎へコンバーション(用途変更)し、大スパン空間の議場への転換に活かしています。
設計コンセプト
庁舎整備の新たな試みとして、区が民間のテナントビルを購入し、区庁舎として活用した事例です。回廊状のショッピングモールが総合窓口・区民ロビーに、フィットネスクラブが開閉式パネルルーバーで多目的に利用できるユニークな区議会議場として、生まれ変わりました。執務室は間仕切をなくしたゆったりとしたオープンスペースとして、省エネ対策、バリアフリー化などの最小限の改修で、最大の区民サービスができる区庁舎を目指しました。
所在地 | 東京都大田区 |
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用 途 | 庁舎 / ホール / 研修室 |
構造·階数 | SRC・S造 11F / 4F |
延床面積 | 41,451m² |
竣工年 | 1998年 |
レンガ造りのポンプ場のコンバージョン / 水道記念館
設計コンセプト
大阪市の水道百周年記念事業の一環として、1914年(大正3年)に建造されたレンガ造りの送水ポンプ場を水道事業の記念館に再生させたものです。原型の素朴な様式主義デザインを損なわないよう補修ディテールに留意しながら鉄骨による構造補強や内外装の改修を行いました。内部は博物館として甦らせ、従来の地下機械ピットの再利用を含めた回遊型展示空間を構成しています。
受 賞 | 国土交通省都市景観大賞 景観形成事例部門(商空間レベル) |
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所在地 | 大阪府大阪市東淀川区柴島 |
用 途 | 博物館 |
構造·階数 | RC・S造 2F |
延床面積 | 1,927m² |
竣工年 | 1996年 |
製菓工場の教会へのコンバージョン / 聖書キリスト教会 東京教会
長寿命化
一般的に鉄筋コンクリート造建築物の耐用年数は60年以上と言われていますが、時代の変化に伴い機能的に不適応となるなどの理由によって竣工後20?30年程度で解体される場合も少なくありません。それを、内外装や設備の改修、必要に応じて構造補強などを施すことにより建物本体を有効活用することが、資源保護・廃棄物削減の観点からも求められてきています。聖書キリスト教会では、既存部分を最大限に利用した内外装仕上と設備の改修によって、製菓工場を教会へコンバージョン(用途変更)しています。
設計コンセプト
既存製菓工場を教会とその付属施設という全く用途の異なる建築物に改修した施設です。初めに工場の建てられている敷地を購入し、その工場を解体することなく躯体をそのまま利用することによって、当初に必要とされた面積をはるかに超える床面積を獲得することができたことに、この漸画の大きな特徴があります。
改修設計方針
1.既存の部分で利用できるものは最大限活用する。
2.周囲の環境に馴染みやすい外観およ外構計画。
3.工事による騒音、振動、埃などの低減化。
受 賞 | BELCA賞 ベストリフォーム部門 |
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所在地 | 東京都練馬区 |
用 途 | 教会 |
構造·階数 | RC造 7F / B2F |
延床面積 | 5,416m² |
竣工年 | 1995年 |
環境省モデル事業「学校エコ改修と環境教育事業」 / 若狭町立三方中学校
設計コンセプト
敷地はラムサール条約登録湿地「三方五湖」で知られる風光明媚な町、若狭町。バイオマスタウン構想を掲げ、町全体で環境問題に取り組む一環で、環境省モデル事業「学校エコ改修と環境教育事業」に手を挙げました。 改修対象の校舎は量産されたいわゆるハーモニカ型校舎。築40年以上経った校舎を「地球温暖化防止につながる学校改修」を目標に3つの柱を軸に進めました。
学習環境の改善
生徒玄関や環境学習ギャラリーを併設した渡り廊下棟の増築により、校舎に中心性を生み出し、そこから校舎全体にアクティビティが広がる空間構成としています。点在していた特別教室は集約・兼用させ余剰教室を生み出し、使い勝手のよい教室配置にゾーニングし直しました。また、クラスルームは学年ごとにまとめ、全て開け放てる木製建具により廊下と仕切り、オープンな学習空間を生み出しました。教室間の間仕切は東西方向に可動でき、減少する児童数に合わせて空間ボリュームを可変させ、多様な学習形態にも対応できる柔軟さを持たせています。
温熱環境の改善
夏は暑く、冬はとにかく寒い校舎。自然エネルギーを生かしたパッシブな手法を中心に「夏暑くなく、冬寒くない校舎」への改善を図りました。 校舎全体は屋根・外壁ともに外断熱化をはかり、開口部のペアガラス化を含め断熱対策を徹底しました。特に夏場対策として、給気窓を教室や廊下に配し、逆流防止の自然排気窓を設置した風の塔により、ドラフト効果を利用した自然換気・ナイトパージを促進しました。また、可動ルーバーにより夏場の日射熱を室内に入れないよう配慮しています。冬場対策としては、地域の間伐材や木屑からできた木質ペレットを燃料としたペレットストーブ(ゼロカーボンストーブ)を採用しています。
環境教育への取組
改修前、三方五湖を模した池のある中庭は、緑が生い茂り立ち入れない場所。なんとかしたいという生徒の発案で、五湖は新たに五つの植栽穴で表現され、昔の名残を残しつつも、走り回れるウッドデッキの中庭に生まれ変わることとなりました。設計・施工は地元高校生との共同プロジェクトにより行われ、地域施工WSも開催し、中庭づくりにより環境への意識を地域へと広げるきっかけとなりました。
受 賞 | 日本建築学会東海賞(作品賞) / 第42回中部建築賞 (一般部門)特別賞 |
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所在地 | 福井県三方上中郡若狭町 |
用 途 | 中学校 |
構造·階数 | RC造 3F / B1F |
延床面積 | 5,454m² |
竣工年 | 2010年 |
「京の伝統」と「現代の環境配慮技術」の融合 / 京都市立朱雀第四小学校
設計コンセプト
本校は、環境省「学校エコ改修と環境教育事業」のモデル校全国20校のうちの一つです。エコ改修にあたり、自然と上手く向き合ってきた京町家の知恵や工夫を現代の環境技術に置き換えた、市のモデルとなる新しい学び舎(や)づくりを目指しました。温熱環境の改善として、屋上や教室壁の断熱化、教室窓のペアガラス化、日射調整庇の設置を施し、高所にはバランス式自然換気窓による重力換気システムも導入しました。内装には京都市産の杉材を多用し、暖かみのある雰囲気を創りだしています。 また、既存校舎をつなぐ2棟の渡り廊下を増築し、環境要素を盛り込むことで、機能性と学習性を合わせて向上させています。増築部1階は「あかしやホール」と名付け、環境学習のきっかけとなる仕掛けを随所に組み込んでいます。そこから続く中庭「いのちの庭」には、ビオトープや水田などを計画し、児童が身近に生き物にふれ合える場としました。
受 賞 | 京都市「京(みやこ) 環境配慮建築物」優秀賞 |
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所在地 | 京都市 |
用 途 | 小学校 |
構造·階数 | RC・S造 3F |
延床面積 | 5,436m² |
竣工年 | 2012年 |
中・長期修繕計画をはじめ、運用開始後の施設管理の合理化が図れます。
建物を構成する部位のライフサイクルを考慮した上で、最適な修繕の時期・予測費用を算定し、中・長期にわたる修繕計画を作成することにより、建物の運営コストの効率化と長寿命化を図ります。