90%以上が市内産木材(新城市立黄柳川小学校での取組み)
日本有数の良質材、三河杉をふんだんに使った校舎を計画しました。
森林が豊富であれば木材の調達には事欠かないと思われがちですが、大量の木材を使用するとなると、あらかじめ伐採のタイミングや
乾燥期間などを把握する必要があり、工期や発注との緻密なスケジュール管理が必要となります。
本計画では地元森林組合等の協力により、総量約800m³、木構造及び木工事の90%以上を市内産材でまかない、
地場産業の活性化、地産地消に貢献することができました。
左上/2階廊下 右上/アリーナ 左下/2階クラスルーム 右下/外観
あたたかみのある木のサイン
協働による親しみやすいデザイン
校舎のサインは、名古屋市立大学鈴木賢一研究室と協働し、木を使った手づくり感のある温かく親しみやすいデザインとしました。
市内産のヒノキを使用し、「木部塗装の濃淡」と「型ぬき」を共通要素として、
それぞれの教室のイメージに合った動きのあるピクトサインとしました。
利用者に芽生える建物への愛着
竣工後、教員や子どもたちに学校で使われている木が地元で育った木であることを伝えると驚きと喜びの声がたくさんあがりました。
森林圏に住んでいる利用者だけあって、木はなじみのある素材のようでしたが、
一日の大半を過ごす学び・生活の場が慣れ親しんだ地元の木でつくられていることで、建物への愛着がより一層増したようです。
作詞中の新校歌にも「地元の木」というフレーズが出てくるようで、学校のように永く大切に使っていくべき公共施設においてこそ、
地域産木材を使用していくべきだろうと思います。
担当者コメント
「せっかく木を使うんだから、なるべく地元の木で!」という思いは木造建築を建てるプロジェクトに関わるみんなの共通の願いです。
けれど実際は、地元で採れる木のボリュームの把握、製材所の機械スペックの把握、建設に使用する木の仕様が担保できるかの把握、
伐採・製材・乾燥・調達を含めた全体のスケジュール調整、前倒しの構造設計と建設に必要な木のボリュームを計算する木拾い、
木を生業にする関係者との良好なネットワークの構築・・・、木を使った美しいデザインを考えることはもちろん、
やるべきことは盛りだくさんです。
森林圏であっても公共建築で地元の木をうまく活用する仕組みは成熟していない。
何より、木造建築を設計する設計者が川上から川下までの木の流れを理解していないことが多いです。
木造建築を設計する技術はもとより、このような仕組みを理解することも「なるべく地元の木で!」を実現するために、
今設計者に求められていることです。